工学専攻 機械工学領域 研究紹介
熱エネルギー工学研究室(伊東研究室)
化石燃料の使用量を減らし地球温暖化を抑制するエネルギー源の一つとして、バイオマス燃料が注目されています。当研究室では、とくに高密度固体バイオマスブリケットを効率的かつ有効に利用することを可能にするブリケット製造条件や燃焼方式の開発を行っています。バイオマスブリケットの密度や水分含有率のブリケット内部熱伝達への影響、着火や燃焼特性への影響を調べるとともに、ブリケットの一端から燃焼させることで燃焼制御を容易にする新しい固体燃料の燃焼方式の可能性について研究しています。
ロボティクス研究室(林研究室)
日常生活の行動を支援する人間共存型ロボットの実現を目指し、ロボット機構・軌道生成・制御則・情緒インタラクション・対人安全性などの研究を行っています。具体的な開発の例としては、まず人間と不意に衝突しても怪我をさせない生活支援ロボット(Fig.1)があります。生活空間のような狭い空間で人とロボットが活動していると、互いの接触を完全に回避することが困難な場合があります。 そこで、このロボットはセンサに頼らずに受動的に衝撃を緩和できる関節機構を搭載しています。また、人間の居住環境に適応可能な2足ヒューマノイドロボットを開発しています(Fig.2)。このロボットの総重量は64.5kg、全長は1.66mで、片脚6自由度、腰部に3自由度、片腕7自由度、片手5自由度、首部に3自由度の合計42自由度で構成されています。水平・平坦路上での動歩行(前進歩行・後進歩行・横歩行)や、様々な物体の把持も実現しています。 さらに、エンターテインメント性を持ったロボット(動物型ロボット・鳥型ロボット・昆虫型ロボットなど)や、ジャンピングロボット(Fig.3)、フライングロボット(Fig.4)、感情表現ロボット、知能制御サービスロボットの開発も行っています。
ロボット制御システム研究室(江上研究室)
機械工学とはものをつくり、それを動かす工学です。当研究室では新しい機能を持ったロボットを開発し、それを思い通りに動かす研究を行っています。
具体的な開発の一例としては、宇宙エレベーターが実現したとき、そのクライマー(昇降機)はどのような機能が必要かを考えて、実験用クライマーの開発を行っており、これをインフラ点検ロボットや工事支援ロボットへ応用する研究も行っています(図1)。
また当研究室で開発した経路制御手法を用いて、 プレート上でボールに思い通りの経路を描かせる装置も開発し、人間では実現できないような高い精度の制御を実現しています(図2)。
健常な高齢者などを対象にした体動による操作可能な倒立振子型電動車いすを開発し,体動により俊敏できめ細やかな動きを実現しており、さらにその段差乗り越え補助機構の開発もおこなっています(図3)。
さらに、アイリス機構を用いたシンプルな構造で、全周囲把持の可能なロボットハンドの開発などの福祉ロボットの研究も行っています(図4はゆで卵を把持している写真)。
知能機械研究室(張研究室)
本研究室では人工知能(AI)技術を連携し、知能ロボティクス、知的情報処理、自動運転に関する研究を行っています。ロボットと環境やユーザとのマルチモーダルな関係性、ユーザの主体性の尊重等の点に大きな特徴があります。人間、コンピュータ、ロボット、更には周囲間環境を含んだ情報空間の中で、人間とコンピュータ・ロボットの双方にとっていかに効率よく情報を把握し、互いに円滑なコミュニケーションを行えるようにするか、という点を重視して研究を進みます。
材料力学研究室(竹村研究室)
当研究室では、機械に用いる多くの材料の中で、軽くて強い点、または環境に優しい点を特徴とした高分子系複合材料に研究対象を絞っています。
複合材料は、2種類以上の基材からできているため、その破壊形態も写真のように従来の材料と比較して非常に複雑となります。これら複合材料の信頼性を高めるには、その破壊過程を詳しく知ることが必要となります。従って、複合材料の破壊過程及びそれらの高性能化を主な研究テーマとしています。
また、地球環境問題に配慮して、使用後の廃棄物問題の観点から、リサイクル性、天然資源を用いたグリーンコンポジットに関する研究も併せて行っています。
航空宇宙構造研究室(高野研究室)
航空機・宇宙機は、軽量かつ高信頼性であることが求められており、そのためには構造設計の進歩が欠かせません。一方で、コンピュータによる解析手法が格段の進歩を遂げていますが、薄肉構造の座屈と呼ばれる破損現象や、継手部の強度、強度の統計的評価など、未解決の分野があります。 当研究室では、それら未解決の分野の研究に取り組んでいます。また近年、大学での超小型衛星の開発が盛んですが、それらは大型ロケットに相乗りで打ち上げられるため、その機会は限られています。そこで、超小型衛星を安価で迅速に打ち上げるための超小型ロケットの開発にも取り組み、エンジンの燃焼試験(上図)や機体の打ち上げ試験(下図)などを行っています。また、コンピュータを使用した繊維複合材料の界面すべり解析なども行っています。
機能材料加工学研究室(寺島研究室)
金属ガラスとは構造は液体そっくりだが、見た目は固体である特殊な金属材料(バルクアモルファス合金)です。強度、耐疲労、耐食性などが極めて優れるため「次世代機械材料」として期待されています。
しかしながら製品化する上での問題は熱力学的に非平衡な材料であるため加工が非常に難しいことです。つまり一定量以上の熱を加えると直ちに結晶化して特性が失われてしまうのです。そこで本研究室では金属ガラスに特有な「過冷却液体」を利用した接合・加工を研究しています。
金属ガラスは、融点の6割程度まで熱すると過冷却状態に遷移して液状化するため、結晶化させることなく超塑性加工が可能です。これは金属ガラスだけが実現できる全く新しい加工法です。この様な技術を駆使して金属ガラスを接合、成形、ナノ粒子化などあらゆる形状に加工することで新たな産業応用を開拓していきます。
近年は沸騰水温度(100℃)で過冷却液体に遷移するAu基金属ガラスの開発や、金属ガラスに対するパルスファイバーレーザ加工などにも取り組んでいます。
精密機械システム研究室(中尾研究室)
ものづくりの基盤技術、マザーマシンとも呼ばれる工作機械に関する研究を行っています。特に工作機械の加工精度を決定づけるスピンドルの開発を行っています。図は研究室で開発した超高速精密スピンドルの構造図です。このスピンドルにビルトインモータが組み込まれ定格回転数は毎分10万回転です。回転軸は空気の圧力により非接触で支持された上に、温度安定性を向上させるために回転軸内部には水冷構造が組み込まれています。このスピンドルは、今後、微細構造を有する先端部品の加工に使用される予定です。
このようなスピンドル開発に加え、工作機械の温度特性の解析や制御、先端材料に対する精密加工、バイオリンなどの楽器演奏ロボットの研究を行っています。
流体工学研究室(中西研究室)
クリーンな再生可能エネルギーである潮流エネルギーと水力エネルギーの利用に関する研究を行っています。潮流エネルギーについては発電ユニットの潮流内での固定方法として係留方式に焦点をあて、係留時の潮流発電ユニットの姿勢を検討するために運動解析法の開発を行っています。図は潮流発電ユニットのまわりの流線の解析結果を表しています。水力エネルギーについては、衝動形の水車の一つであるターゴインパルス水車の三射化、さらに、小水力で問題になる河川を流れる植物由来の流下物などの水車への流入を防ぐ除塵装置を開発しています。
熱工学研究室(原村研究室)
「スターリングエンジン」は、作動ガスを高温部と低温部に分け、それぞれの体積を変化させながら、等温圧縮、等積加熱、等温膨張、等積冷却の4つの基本行程を繰り返して熱を仕事に変換することができます。
現在、流動抵抗を大幅に低減して高出力・高効率を実現するために、イラストのような扁平なエンジンの可能性を探っています。パワーピストンを固定した状態でシリンダの端面における熱伝達率を測定し、図のような熱伝達の分布が測定されました。現在、伝熱促進の方法を試みているところです。
機械力学研究室(山崎研究室)
当研究室では、主に、振動と音響のエネルギーの流れに着目した研究を行っています。例えば、上図のように、エンジンの振動を車室内で放射させず、ボディの振動をボディ構造の設計によりコントロールして、トランクルームまで運び、そこで放射させれば、車室内は静かにできる、ということを実現するための研究を行っています。
下図は、三枚の板をつなげた構造物で、真ん中の板に渦型のエネルギーの流れを形成すれば、その先(左側の板)への振動の伝達が小さくなる、という振動遮断の考えを示したものです。これとストレートの流れを形成する(振動伝達の促進)ことを組み合わせることで、振動の遮断と促進により静かな車室内を実現するボディ設計ができつつあります。
精密加工学研究室(由井研究室)
我が研究室は、令和元年に発足した新しい研究室です。精密加工や工作機械に基軸を置き以下の研究・開発に取り込んでいます。
1.硬脆材料は近代産業に欠くことのできない重要な素材で、難削材のためダイヤモンド工具刃先に摩耗やチッピングが発生します。これを抑制するために、ダイヤモンドを透過したレーザ光を加工点にピンポイントで照射する新しい複合微細加工法を発案し、実用化研究を進めています。
2.日本の国土は狭いが、広大な排他的経済水域を有しています。そこで、海面下にソーラパネルを設置することを考え、バイオメティックを利用して海中生物汚染に強く、太陽光乱反射の少ないパネルテクスチャを有するパネルを試作し、実証実験を行っています。