工学専攻 応用物理学領域 研究紹介

数理生物学研究室(宇佐見研究室)

生物学や化学は、ある領域で物理学との接点を持っています。私の研究室では生体の動力学と、情報処理に対する生物学的なインスピレーションによる研究を行っています。まず、5億年前のカンブリア紀に生きたアノマロカリスという生物がどのように泳いだか、その形がどのようなメカニズムで進化してきたかを流体力学を解くことによって解明しました。次に、白亜紀に生きた大型の2足肉食恐竜であるティラノサウルスの走行様式について研究しました。古生物学における動力学の研究として、大型のティラノサルスは重すぎて走れないという学説が先行研究としてありました。本研究室では、現在得られる生体パラメーターを網羅的に調べ、人間よりも速く走れる可能性があることを示しました。
現在は人工知能におけるニューラルネットの発展研究に取り組んでいます。人工知能研究は60年代後半にテキストベースの研究がなされ、80から90年代にニューラルネット研究のブームが起こるものの、一時停滞をしました。ところが2010年代より、層を厚くしたニューラルネットであるディープラーニングと、教師信号としてインターネットにある大量のデータを与えることによって画像識別能力が飛躍的に増大しました。このことにより2017年の現在では目覚ましい人工知能研究の進展が見られます。本研究室ではこのようなニューラルネットの発展に関する研究に取り組んでいます。

高エネルギー粒子観測研究室(有働研究室)

今からおよそ 100 年前, 高エネルギーの粒子が宇宙からやってきていることが発見され、 宇宙線と名付けられました。宇宙線の中でも特にエネルギーが高い「最高エネルギー宇宙線」は磁場の影響を受けにくく、観測することで宇宙線の発生源を特定できるのではないかと期待されています。地球に飛来した宇宙線粒子は大気と衝突してしまうため、地上では直接検出することはできず、宇宙線が大気中で引き起こす空気シャワー現象によって、元の宇宙線のエネルギーや到来方向を測定します。 本研究室では、アメリカ・ユタ州の砂漠地帯に二種類の空気シャワー検出器を設置して, 最高エネルギー宇宙線の観測を行っています。宇宙線発生源の探索を進めながら、新しい粒子検出器の開発や、メカトロニクスによる実験装置の遠隔化·自動化, 光学望遠鏡の較正などを研究しています。

ナノ物性研究室(客野研究室)

物質はサイズを小さくすると、莫大な数の原子からなる通常の物質(バルク物質)からは予測できない新規な性質や機能を発現することがあります。本研究室では、カーボンナノチューブやグラフェンなどのもつナノサイズの空洞や隙間に物質を閉じ込めた「ナノ空間物質」を作製し、新規な物性(相転移、電気・磁気的性質、ナノ流体現象、ナノ摩擦現象など)の探索と解明を行っています。研究手法は、X線回折実験、熱物性測定、電気物性測定、光物性測定、走査型プローブ顕微鏡観察、計算機シミュレーションなどです。X線回折実験では、より精密なデータを得るために、外部の研究施設で高輝度の放射光を用いた実験も行っています。これらの手法を用いて物性解明を行うとともに、ナノ空間物質の新物性を応用したデバイスの創製・提案にも取り組んでいます。

計算統計物理学研究室(佐々木研究室)

スピングラスやガラスなどのランダム系を、統計物理および計算物理の手法を用いて研究しています。強磁性相互作用と反強磁性相互作用がランダムに入り混じった、スピングラスと呼ばれるランダム磁性体や、分子配置が不規則な状態で固まったガラスなどのランダム系では、熱平衡状態が温度と共に不規則に変化する温度カオスや、ダイナミクスが過去の履歴に依存するエイジング現象など、通常の規則系では起こらない新規な現象が数多く観測されています。そのメカニズムを解き明かすことが研究の目的です。また、ランダム系や長距離相互作用系において有効なモンテカルロ法の開発や、シミュレーションによるナノ磁性体の特性評価なども行っています。

宇宙環境計測研究室(清水研究室)

宇宙空間を飛び交う未知の粒子の探索のため、人工衛星や高高度気球に搭載する観測装置の研究開発を行っています。宇宙空間に存在すると考えられる暗黒物質や反粒子などに関わる高エネルギー現象の観測を目指し、高真空かつ高放射線量である宇宙環境で用いる放射線測定器やその制御・電力・冷却システムの開発、コンピュータシミュレーションを利用した装置の設計を行っています。 現在は主に、南極周回気球による暗黒物質探索のための測定器開発を進めています。また、国際宇宙ステーションに搭載された高エネルギー宇宙線観測装置のデータ解析を行っています。

天体放射線計測研究室(田村研究室)

宇宙における高エネルギー現象である超新星爆発や活動銀河核によって、電子や陽子などの粒子が光速近くまで加速されて宇宙線となり、それらが地球にも届いています。宇宙線を大気球や宇宙ステーションで観測するための放射線・粒子線計測装置を開発し、得られたデータの解析を行っています。装置をゼロから開発するには、検出器構造の設計、信号回路の開発、データ取得システムの開発、検出性能を最適化するシミュレーション、装置の性能評価試験などが必要です。また、取得したデータから結果を導き出すためのデータ解析にもオリジナリティが要求されます。放射線・粒子線を計測する技術は、環境放射線(ガンマ線など)の計測や、医療に応用されているPET(Positron Emission Tomography:ポジトロン断層法)などの技術とも共通点があります。

量子物性理論研究室(西野研究室)

近年の微細加工技術の進歩により,ナノスケールのデバイスの研究が活発に進められている。ナノスケール系の物理現象には量子効果が現れることが特徴的である。例えば,GaAs/AlGaAsなどの半導体ヘテロ接合面における電気伝導は,電子が波としての干渉性を保持して流れることが実験で確認されている。一方,このような電気伝導現象を理論的に解析するためには,平衡状態とは「遠く離れた」非平衡状態を扱う必要があり,一般的な処方箋は確立されていない。
当研究室では,開放量子系の散乱状態を用いて,ナノスケール系の電気伝導現象を理論的に研究している。ここで開放量子系とは外界からの電子の出入りのある量子系である。最近の研究では,開放型量子ドットに対して,量子ドット付近に電子間相互作用の存在する場合に,多電子散乱状態の厳密解を得た。これを用いて非平衡定常状態を実現し,バイアス電圧下の系の電流電圧特性を計算した。

地球宇宙情報研究室(日比野研究室)

オリジナルサイト
本研究室では、超高エネルギー宇宙粒子の観測により、主に銀河宇宙の活動的な天体の探索 およびその活動メカニズムの解明に取り組んでいます。また、荷電宇宙線の起原、伝播や加速メカニズムや宇宙線をプローブとした太陽磁気圏の研究にも取り組んでいます。
具体的には、中国との共同研究として、1990年より標高4,300mのチベット自治区羊八井にて10TeVからPeVエネルギー領域の宇宙線組成および北天超高エネルギーガンマ線天体の研究のため、地表空気シャワー観測装置と地下ミューオン検出装置の連動観測を行っています。また、2019年からは南米ボリビア・ラパス近郊の標高4,400mのチャカルタヤ山山腹にて、銀河中心方向の超高エネルギーガンマ線天体の研究も開始しました。

電子物性研究室(松田研究室)

本研究室では共有結合性ネットワークからなる物質の研究を行っています。ホウ素、炭素、シリコンなどの軽元素からなる物質のなかには、それら原子間の共有結合の異方性に由来する、ナノメートルスケールのケージ構造やチューブ構造をもつ物質が多く存在します。例えばカーボンナノチューブは炭素原子の共有結合からなる六角形格子構造のグラフェンシート1枚をチューブ状に巻いた構造をしており、その内部に直径1nm程度の空洞(ナノ細孔)をもっています。我々はこのようなナノ構造物質の電子物性を調べる研究や、それらのナノ細孔を利用した物質開発と新規物性探索・新機能創出の研究を行っているほか、発見した物性を利用したデバイスの提案・開発にも取り組んでいます。

計算数理科学研究室(山崎研究室)

非線形関数解析学を用いて、数学の立場から工学で現れる非線形現象を理論的に解析しています。さらに、コンピュータを用いて数値実験を行い、理論解析結果を検証しています。
我々の身近で起こる現象の中で、今、早急に解明しなければならない自然現象や社会現象が数多くあります。そのような未解決問題を数学の立場から理論的に解決しようと取り組んでいます。具体的には、物質の溶解凝固問題、合金の成分分離問題、多孔性媒質内の液体浸潤問題、カラー画像処理問題、結晶成長問題などの理論解析を行っています。このような実現象の理論解析をしながら、凸解析学や非線形関数解析学という分野の数学の研究も行っています。さらに、コンピュータを用いて数値実験を行いながら、理論解析結果を検証しています。
これらの研究活動を通じながら、実現象のメカニズムの理解を深め、最終的には、現象を制御することを試みています。